企画が始まるまで⑤ / 演奏家との出会い

「アーティスト・イン・ばあちゃんち」オフィシャルウェブサイト


「地方でこそ、コンサートやりたい!いつでも呼んで!」

私が協力隊になりたての頃、そう声をかけてくれる演奏家の知人がいました。


でも、その人のことを村の人は誰も知らない。知らない人が来てくれることをありがたいと思う人はいるかもしれないけれど、知ってる近所の小学生が演奏する太鼓のほうが感動を呼べる、なんてことは結構あるものです。

いっぽう、地元出身の演奏家は、あちこち引っぱりだこ。昔からのよしみで応援してくれる人はたくさんいるけれど、忙しすぎて練習やスキルアップの機会がない。そんな悩みを抱える知人もいました。


さらに、圧倒的な練習場所不足。福井県内では、何人かで楽器の練習ができる練習室はハーモニーホールだけ。あとは公民館が各地域にいくつか。ピアノを必要とする場合、ピアノのある部屋の競争率が高いので、ピアノを持っている演奏家の自宅で練習をする人も多いのです。


演奏家と聴き手の、この断絶をどう埋めたらいいものか…。

途方に暮れた私がある時出会ったのは、岐阜県にあるアーラ可児市文化創造センターの主催する「アーラ未来の演奏家コンサート」でした。


このコンサートでは、可児市に縁もゆかりもないクラシック音楽の演奏家が、5日間同市に滞在し、公開リハーサルやレッスン、学校訪問など、地域の人を巻き込んだ濃密なスケジュールを過ごしながら、地域の人との顔の見える関係を作っていくプロジェクトです。

このプロジェクトを通して、最初は「知らないけどなんかスゴいらしい人」だった演奏家が、「知り合いのスゴい人」になっていき、最終日のコンサートには「知り合いを応援しに行く」気分で地元のお客さんが来てくれる、あったかいコミュニティができあがるのです。

演奏家と地域の人が顔の見える関係を築くこと。演奏家の日々の営みが、自宅の小さな空間を飛び出して、地域の人に見えるようになること。ここに、音楽と地域の人を結ぶ、新しいコミュニティの作り方があるように思います。

AIGR / Artist in Gramma's Residence

ばあちゃんに、あの音をもう一度聴かせてあげたい―。そんな思いから、3つのささやかな音楽プロジェクトが生まれました。ばあちゃんのネットワークとおもてなしに新しい交流が加わり、ばあちゃんも、地域も、元気に。

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